輝ける先輩達 第1回

戦後大衆文化の旗手(NO.1)

ゴジラ(神)を放った男


映画プロデューサー
田中 友幸 (中32回)



 1950年代後半”もはや戦後ではない”といわれはじめた時代に日本の大衆文化の世界に二人の族手が登場し、その名を永久にとどめる数々のヒット作品を放った。
 映画プロデューサーの田中友幸と、芥川賞作家・剣豪小説の五味康祐である。
 二人は共にわが八尾高校の同窓生。先輩と後輩の仲である。
 今回は先輩(中32回生)田中友幸をとりあげたい。

 田中友幸は昭和19年プロデューサデビュー以来、半世紀を映画とともに歩み、200本を超す映画をプロデュース、数々の名作を世に送り出し(注1)文字通り日本映画をかたちづくってきた。
 ”戦後”と一口にいうが、すでに半世紀以上を経過している。この間観客の生活も変るし、好みも変る。映画界も地盤沈下した。それにも拘らずこれだけの長期間ヒット作品を打ち続けたプロデューサーは世界にも前例がない。
 中でもこの田中の名を世界的に不朽のものにしたのが、田中によってこの世に放たれた究極の創造物=魔神『ゴジラ』であった。
 『ゴジラ』は昭和29年の第一作以来、途中休止の時期はあったが、平成7年までの40年間に計22本製作され(注2)、のベ2200万人の観客動員を記録した。(その後平成7年田中の死による中断をのりこえて平成11年、21世紀を前にして復活、新々シリーズが開始された。)なお、この2000万人を超す観客動員によって『ゴジラ』はまさに日本の大衆文化史上もっとも大きな出来事の一つとなったのである。
(以上、田中文雄著「神(ゴジラ)を放った男-田中友幸」より)

(注1) ゴジラ・ラドン・モスラ・地球防衛軍・海底軍艦・日本沈没などのSF特撮映画、太平洋の嵐・キスコ・山本五十六・日本海大海戦・連合艦隊などの戦争映画、用心棒・天国と地獄・影武者などの黒沢明監督作品、銀嶺の果て・暗黒街の対決などのアクション映画、人間革命・八甲田山などの超大作といった娯楽作品など200本以上。

(注2) 田中は前記のように200本を超す映画を作り続けたが70才をこして又々ゴジラに回帰した。ゴジラは彼の映画、プロデューサー人生の最後の帰着点であった。

 しかしこのゴジラは、公開された時の批評家の評判は良くなかった。むしろ「ゲテ物映画」扱いをされた。にも拘らずゴジラがこれはど熱狂的に受け入れられたのはなぜか。ゴジラはなぜかくも愛されたのか。
 そして田中はゴジラで何を描き、何を訴えようとしたのか。ゴジラを生み出した時代背景は、など追求すればおもしろい課題ではあろうが、これらについては論評はさけ、田中自身の証言を記してご参考に供したい。

証言1 公開された時「ゲテ物映画」扱いされましたが、ただ一人、三島由紀夫さんだけが 「文明批判の力を持った映画だ」と高く評価して下さつたことを憶えています。

証言2 ゴジラというのは水爆から生まれた怪獣でね。人類が自ら作ったもののために報復をうけるという完全なメッセージ映画でしたね。


 田中は映画プロデューサーという本業以外に、株式会社東宝映画取締役会長等、映画関係の要職を歴任、昭和56年勲3等瑞宝章受章。


ゴジラ金字塔
20世紀を動かした3大映画に選ばれる。
平成12年12月6日NHKテレビの「その時歴史は動いた」の中で評論家の川本三郎氏が20世紀を動かした三大映画として「戦艦ポチョムキン」「風と共に去りぬ」についで「ゴジラ(第1作)」をあげました。
次いで平成13年1月23日同じくNHKテレビ「プロジェクトX」は、このゴジラの誕生の秘話を取り上げました。

初代ゴジラのメッセージ復活

2001年12月に公開された「ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃」(25作目)は水爆怪獣としての初代ゴジラ(1954年)の原点に返った映画として注目されています。
このゴジラは娯楽性も十分に盛り込みながらアジアの犠牲者を含めた太平洋戦争の戦没者の恨みが宿るとされ、戦争や核と強く関連づけられているといいます。

これは田中友幸氏が「初代ゴジラ」に託したメッセージと通ずるものです。

ゴジラがハリウッド殿堂入り

 日本映画から生まれた人気怪獣ゴジラが米ハリウッドで殿堂入りすることが決まり、東京都千代田区の東宝本社で20日、認定証がゴジラに手渡された。
 ゴジラの名前を記した星形のネームプレートが来月29日、ロサンゼルス・ハリウッドの目抜き通りにお目見えする予定。東宝によると、日本生まれのキャラクターが殿堂入りするのは初めて。ディズニーのミッキーマウスやドナルドダックなどは既に殿堂入りを果たしている。
 ゴジラは今年、誕生から50周年。12月4日公開の第28作「ゴジラ FINAL WARS」で、シリーズを休止する。
(2004/10/20 サンケイWEBより)

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